バブル景気とポストプロ

TechInfoの記事を書きながら、昭和の終わりから平成の序盤の頃を思い返していました。ちょうどこの時期には、バブル景気が通り過ぎた頃で、台風が通り過ぎていったような感じでした。自分で言うのもなんですが、私自身お金の匂いに極端に鈍感なので、バブル景気の恩恵を受けた感覚がありません。隣のビルから景気のいい人たちを眺めていたようなものです。

あの頃のポストプロ業界は元気がありました。アナログシステムからデジタルシステムへの移行があったり、それまでのレガシーなテープ編集から斬新なコンセプトの製品が登場したりしました。毎年4月に開催されるNAB会場でも、ポストプロ関連のブースが明らかに活気がありました。AppleもNABに出展していたこともありました。日本では不動産関係のお金持ちがポストプロ業に参入する事例がいくつも見受けられ、投機物件として見られていたようです。美味しい商売だったかどうかは怪しいものです。

バブル景気が引いていくとともに、ポストプロ業界も氷河期に進んでいきました。ただ急激に変化したのではなく、20年くらいの時間をかけて徐々に進行した感じです。そのため、冷えていく気配を感じていない人も多かったように見えます。「また景気のいい時期が戻ってくるよ」なんて考えている人もいたくらいなので。

バブル期に都内港区で編集室を立ち上げようとすると、ピーク時で5〜6億円と言われていました。1時間あたり15万円の部屋です。景気が冷え込むとともに、システムにかかる費用もPCベースに移行したことで安価になっていきます。そうするとあまりお金がかからずに編集システムが手に入るようになります。それは製作者にはいいことではありますが、経済的にはそれほど恩恵はなかったように思えます。お金の動きが減る業界には活気がなくなり、経済的にも冷え込んでくる、ということをバブル景気で私は学んだ気がします。

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