DaVinci Resolveの再生補助機能

再生補助機能というとわかりにくいですが、編集時にビューワでコマ落ちが出て、それを回避するための対策機能という意味です。コマ落ちは、H.264や大きな解像度のメディアファイルなどで発生率が高まります。また、エフェクトによって負荷が大きい場合、タイムラインのフレームレートの逆数秒以内で処理ができないと、コマ落ちが発生します。コンピュータのCPU、ストレージI/O、時にはGPUなど、ハードウエアのスペックが大きく影響します。

ハードウエアのスペックは容易に改善できないので、DaVinci Resolve側で対策することが現実的です。Resolveには複数の対策機能があります。これは過去のバージョンアップでどんどん便利な機能が追加され、現在では複雑になってしまったという経緯があります。ただ、ユーザーの目的によって使い分けられるので、正確に特徴を把握して使い分けると、コマ落ち回避で効果が得られると思います。

タイムラインプロキシー解像度

再生メニューにあるこの選択肢は、デフォルトで「フル」になています。これを1/2、1/4に変更することで、ビューワ内の品質を下げて再生のパフォーマンスを向上できます。これが最も優先度が高い機能です。

最適化メディア

最適化メディアとは、クリップ単位で別ファイルを作成するもので、プロキシーとは別です。最適化メディアは、一時的に作成する目的で使用するのがお勧めで、タイムラインの特定カットに置かれた8K素材が再生でもたつくので、一時的に低解像度の別ファイルを作成する。という使い方になります。ソースクリップをメディアプールから右クリックで、「最適化メディアを生成」で作られます。作成中はResolveの作業は中断されます。この最適化メディアはResolveの特徴を活かした仕組みになっていて、実は拡張子がdvccの連番ファイル形式です。プロジェクト設定からProResを選択しても、連番形式で作成されます。Resolveは過去の経緯から、実は連番ファイルの再生パフォーマンスがとても高く設計されているそうです。

キャッシュ

再生メニューの「レンダーキャッシュ」を有効にすることで、自動的に作成される別ファイルです。キャッシュのあるなしは、タイムラインパレット上部のインジケータで、赤もしくは青のラインで判別できます。エフェクトを追加するとキャッシュが作成され、エフェクトのパラメータを変更すると自動的にキャッシュは再作成されます。このキャッシュ機能が生成している別ファイルも、先の最適化メディアと同じ拡張子dvccの連番ファイル形式です。キャッシュはユーザーの操作がない時に作成されるので、編集中の隙間時間でResolveが作成してくれます。そのため、キャッシュの生成は部分的に実行されます。昔のFinal Cut Pro7の時代では、これに相当する別ファイルはQuickTime動画ファイルでした。作成時に中断するとこのファイルが分割化されてしまい、再生時にコマ落ちが出ることがありました。Resolveではキャッシュはそもそも連番ファイルで1フレーム単位で分割されているので、キャッシュファイルの断片化が起きないのです。コロンブスの卵のような発想で、とても賢いやり方と言えます。

プロキシー

そしてプロキシーファイルです。これはオリジナルメディアに対して別の代理ファイルです。8K素材に対して、プロキシーファイルはHD解像度にするような使い方です。事前に一括してプロキシーを作成してもいいですし、急いでいる場合にはBlackmagic Proxy Generator.appをResolveと並行して起動させて、プロキシーを作成することもできます。

レンダリング機能

さらにResolveにはレンダリングしてクリップを置き換える機能があります。ここまでくると、機能が多すぎて違いを把握するのが困るほどでしょうね。このレンダリング機能は、完成クオリティで完全に別ファイルを作成できます。そのため、ノリシロを加えて後でトリミングする際にも助かります。レンダリングで差し替えられた部分はデリバー時に利用されるので、オリジナルメディアと扱いは同じです。レンダリングした後にその部分をやり直したい場合には、カットを右クリックから「オリジナルに分解」を実行します。これにより、レンダリングしたメディアファイルは無効になります。無効にしたレンダリングファイルはResolve側からは再利用できないので要注意です。手動で取り込んで差し替えることは可能です。

基本的にはこのような機能を組み合わせて、選択してユーザーが使い分けることになりますが、まずは時間のある時にでも違いを把握されることをお勧めします。

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