Qlipリリースに寄せて

yamaqblogを長くご存じの方からは、「以前のような活発な投稿が懐かしい」という声をいただくこともあります。実際、昨年のInterBEE会場でも、そのようなご意見をいただきました。最近はDaVinci Resolveのリリースノートの翻訳記事が続いていたので、今回は久しぶりに技術系のコラムを投稿したいと思います。

まもなく、マウントキューのウェブサイトから、動画ビューアー「Qlip」がリリースされます。Qlipは10年ほど前から細々と開発を続けていました。独学での開発に限界を感じたことや、理想としていた形を持つ素晴らしい他社アプリが登場したこともあり、一度は静かに開発を終了した経緯があります。当時のユーザーの皆様には、感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございました。

一度は開発を終了したQlipが、なぜこのタイミングで息を吹き返したのか。昨今の生成AIの爆発的な進化が影響していることは、皆さんも想像に難くないでしょう。LLM(大規模言語モデル)をコーディングに活用することで、私のような初心者コーダーでも、安定したコードがスルスルと形になっていくのです。

私がコーディングでLLMを本格的に利用し始めたのは、2024年の後半頃でした。それ以来、Google検索で調べることは完全になくなりました。とはいえ、当時はまだ部分的に質問し、その回答と自分の知識を組み合わせてコードを組んでいる状態でした。しかし、コーディングエージェントへの依存度は日に日に高まり、2025年末からは、ついに自分でコードを書くことがなくなりました。きっかけは、開発環境をC++/Qtへ移行したことです。「コーディングエージェントの力を借りれば、全くの未経験であるこの言語でもアプリを構築できるはずだ」と考えたのです。その判断が無謀ではなく妥当であったことは、現在の結果が証明しています。

Xの投稿を見ると、私のように言語知識の浅い者がソフトウェア開発の世界に参入することに対して、概ね否定的な意見が多いようです。それについては私も同意します。しかし、これほど有効な手段をみすみす手放すのは、あまりにも惜しいと感じています。なんとか自分なりの方法で、コーディングエージェントに伴走してもらう開発スタイルを確立したいと考えています。

コーディングエージェントとの開発は、いわば「オーケストラの指揮者と演奏家」の関係に似ています。指揮者はすべての楽器を完璧に演奏できるわけではありませんが、素晴らしい演奏という一つの作品をまとめ上げる能力を持っています。コーディングにおいて私に求められるのは、どのようなソフトウェアに仕上げるかという「明確なビジョン」を持ち、それに対して誰よりも熱い情熱を注ぐことです。C++/Qtの専門知識はありませんが、これまでの独学で得た経験は多少なりとも役に立ちます。C++のコードを眺めれば、ある程度の挙動は想像がつくものです。

映像のプロに向けて動画ビューアーを公開する以上、生半可な気持ちではすぐに淘汰されてしまいます。私自身、それなりの覚悟を持ってQlipをリリースする所存です。ユーザーの皆様に失望されないよう、入念に準備を進めています。Qlipを使って「こんなアプリがほしかった」「助かるよ」と言っていただけるなら、それだけで十分です。ですので、有償化するつもりは一切ありません。安心してお使いください。また、Qlipが自発的にインターネットへ接続して情報を収集したり、広告を表示したりすることもありません。

Qlip 3.0はまもなくリリースされ、皆さんの元へ届きます。もし今お使いの動画ビューアーに満足できていないのであれば、ぜひ一度お試しいただければ幸いです。