オーディオバーチャルパイプ

以前からプロ向けオーディオアプリのプラットホームとして、Macが採用されることが多いという背景がありました。ProToolsやPerformerなどは初期の頃はMacのみで使える時期もあったと記憶しています。Macには音のプロフェッショナルを満足させる環境が整っていたという安心感があったのだろうと思います。しかし、デフォルトでは十分ではないところもあります。それは現在でも変わりありません。そのひとつが、アプリや機器との接続です。この課題を解決するテクニックについて、私の経験を元にして解説します。

オーディオバーチャルパイプとは

インターネットで検索しても、オーディオバーチャルパイプという用語は出てきませんので、これは私の勝手な命名です。一般的にはバーチャルオーディオドライバと呼ばれているようですが、オーディオバーチャルパイプの方がイメージしやすくしっくりくると思っています。ちょっと直感的ではないのですが、私の普段使っているYouTube Liveでのオーディオ系統をまとめたのが、このダイアグラムです。各所に「パイプ」が置かれています。このように、アプリケーションやハードウエアなどMacの中で使えるオーディオデバイス間に、このオーディオバーチャルパイプが活躍します。この機能を持つ仕組みがMacには用意されていないため、ユーザーが自分で入手してセットアップすることが必要なのです。

例えば、DaVinci Resolveのオーディオモニター出力をヘッドホンで聴きたい時には、System Outputにそのヘッドホンデバイスをセットするでしょう。これは一般的な使い方です。もしDaVinci Resolveの出力をGaragebandに送って、音楽とミキシングしたくなったらどうしますか?DaVinci Resolveの中のFairlightでミックスする、というのは今回はナシです(笑)。DaVinci ResolveとGaragebandだけの機能では、これは実現できません。そこで登場するのがオーディオバーチャルパイプです。この機能をMacに追加すると、使用するアプリケーションの入出力の項目の中に表示されるので、そこを経由すればできなかったルーティングを確立できるようになります。このように、複雑な系統をMacの中でやることになると、なんらかの接続をするための仕組みが必要になるのです。私が日々お世話になっているのが、Blackholeです。これは、今のところは無償で使えることと、多少のプログラミングの知識があると、機能をカスタマイズできるという柔軟性を兼ね備えています。

Blackholeの働き

Blackholeはこれまで使ってきた中では、大きな不具合はなく非常に安定して使えています。初めての方でも不安はないかと思います。Blackholeがどのように働くかというと、まさにパイプのようにソフトウエアやハードウエアの間に入って接続を助けてくれます。私たちの日常で目にするようななんらかのパイプと同様、一方から何かを流し込むと、他方から出てきます。入口から入ってきたものは、必ず入ってきた順番で出口から出てきます。パイプの中で勝手にその順番が変更されることはありません。プログラミング用語のFIFO(First In First Out)に相当します。これに対してFILO(First In Last Out)というのもあって、これはスタックと呼ばれるものです。机の上に本を積み上げるようなイメージで、一番初めに置いた本は、その上の本を上から順番にどかさなければ取り出すことができません。これをスタックと呼びます。

Blackholeには明確な出入口はないのですが、アプリやデバイスの出力側に接続するとBlackholeは入口側にリンクされます。何かの入力側に繋げばBlackholeの出口と接続されます。Blackholeには設定のためのソフトウエアがないので、何もユーザーは手出しができないのかと思いがちですが、macOS付属のAudio MIDI Setup.appを使うことで、レベル調整やサンプリングレートが設定できます。私が遭遇した未熟な使い方ミスでは、ここでレベルが絞り切られていてBlackholeから音が出てこなかったことがありました。Blackholeを使い始める際には、必ず一度はAudio MIDI Setup.appでどのような設定になっているかを確認してください。

ちょっとしたカスタマイズ

Blackholeの標準的な配布形態では、2chタイプと16chタイプの二種類のみの公開になっています。簡単な使い方ではこれで十分なのですが、接続するデバイスが多くなるとこれでは足りなくなってしまいます。そんな時には、ソースファイル一式をダウンロードしてきて、少しだけの修正をして必要な数だけ複製することができます。この点は、オープンソースのユーザーに優しい長所です。有償で使える高価な同様のソフトウエアもありますが、それらはこのような柔軟性はないはずです。

私が行ったカスタマイズでは、6chタイプを一つ作成したり、追加の2chタイプを複数追加したりしています。カスタマイズは、チャンネル数やデバイスの名称を変更するだけで、ソフトウエアの内部を修正するような込み入ったことではありません。名称を変更することで、システム環境設定などで表示される際の名称を自分の好みに変更することが可能です。私の場合には、作者の方に敬意を示す意味で、BH(Blackhole)を先頭につけるようにしています。カスタマイズの方法は、Blackholeのgithubのページに書かれています。

まとめ

以前SoundFlowerというソフトウエアがありました。現在は開発が終了していて、最新のmacOSでは使用できないのですが、Blackholeはこれを最新の環境でも使えるようにしてくれるものです。現状での最新のmacOSや、最近登場したM1搭載のMacでも使えるという最新さも持っています。オーディオバーチャルパイプという仕組みは普段は滅多に使うことがないかもしれませんが、去年から盛んになったオンライン配信など、システム的に複雑になる構成では、知っておくと問題を解決できる便利な仕組みに違いありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください