Premiere Proの色について|実践

前回の記事では、映像業界のみなさんが手を焼いているPremiere Proの色の取り扱いについての考察を書きました。なぜ色の違い(カラーシフト)が起きるのか?どうすれば良いのか。などを解説しました。ただし、具体的な手順にまでは踏み込んでいません。そこで、今回は理屈はいいので、手っ取り早く目の前の仕事で活用したいというような、すぐに利用するための手順を詳しく具体的に解説します。

0)はじめに

なぜPremiere Proでカラーシフト問題が発生しているかの原因は、出力したメディアファイルに含まれるNCLCタグをmacOS標準のQuickTimeプレーヤーで表示した時に正確に反映してくれないからでした。その背景事情は前回の記事をご覧ください。

原因がわかったところで、ではどうやってPremiere Proを使えば良いのでしょうか。残念ながらPremiere Pro単独ではこの問題は解決できません。そこで、無料版も手軽に使えて確固とした機能でサポートしてくれるDaVinci Resolveと組み合わせることで、この問題を解決することにしました。DaVinci Resolveの無料版は驚くほど機能制限が少ないプロ向けの総合アプリです。今回はそれを使って、単なる「変換器」として利用しようという贅沢な使い方です。この記事で取り上げる環境は最後に列挙しますが、Mac環境限定であることにご注意ください。

1)Premiere Proでの準備

カラーシフト問題を解決するためのPremiere Pro側の注意点は、一点だけです。理想的にはさらにもう一点注意すれば、とても信頼を持って使えるシステムにはなります。Premiere Proでは現状確実に出力できるカラーサイエンスはRec709のみです。限定的にHDRフォーマットに対応しているようではありますが、その点については今回の本論からは外れるので取り上げません。

設定をする際にまず環境設定を開いてください。一般の中にある「ディスプレイのカラーマネジメント(GPUアクセラレーションが必要)」というチェックボックスにチェックを入れてください。これにより、macOSのColorSyncがビューワに対して有効になります。ビューワの色は、そのMacに接続されているディスプレイに対するDisplay profile(iccファイル)に基づいて、macOSによって制御されます。その結果、リファレンスモニターでの発色に近づくことになります。ただし、Macのディスプレイは特にMacBook ProやiMacの場合には、経年劣化が起きてもそれを補正する仕組みが単独ではありません。そのため、Macの経年劣化には太刀打ちできないので、それなりの色再現性に留まります。

そして、もう一点の選択肢が外部リファレンスモニターの使用です。これは追加コストも必要で簡単ではないのですが、可能であればカバーすることで確実な編集システムが成立できます。MacからビデオI/O例えばBMD社のUltraStudioシリーズなどを経由して、HDMIもしくはSDIでリファレンスモニターに接続します。リファレンスモニターはユーザーが個人で校正できるEIZO社製のColoeEdgeシリーズが私のお勧めです。リファレンスモニターへの接続は、MacのDisplayPortから直接モニターにつなぐことでも一見すると可能に見えます。しかし、この接続では正確な色再現が困難なので、必ずビデオI/Oを経由してください。この一点もしくは二点の準備さえしておけば、これまで通りの編集を何も気にせずに行うことができます。

2)Premiere Proからの出力

編集が終わるとメディアファイルへの書き出しに移ります。Premiere Proの書き出し設定から、ビデオとオーディオの設定を確認してください。まずビデオです。ビデオコーデックは、Mac環境ですのでProResファミリーを選択することになると思います。今回は一般的なProRes422HQ選択しました。続いて項目を下に下がり、カラースペースを書き出しの確認です。ここは、当然ながら「Rec709」です。続いてオーディオです。オーディオコーデックは非圧縮固定になっているのでそのまま次に進みます。サンプルレートは「48000 Hz」、サンプルサイズは「16ビット」で良いと思います。

ここでのポイントは、ビデオとオーディオの設定項目は、後の工程でDaVinci Resolveでも再利用するので、間違いのないようにメモしておいてください。Premiere Proからの出力と同じコーデックの設定で、DaVinci Resolveからも再度書き出すわけです。

3)DaVinci Resolve無料版の導入

最新版のインストーラーを、BMD社のWebサイトからダウンロードしてください。有償版のStudioバージョンも同じところにあるため、「Studio」の記載がないものを選択してダウンロードしてください。Studioなしが無料版です。ファイルサイズは1GBを超えるので、そこそこ待ち時間がかかると思います。インストールは特別な操作は不要なので、画面の指示に従って進めるだけです。インストール後のMac再起動は不要です。

初回の起動ではチュートリアル動画が表示されますが、それはスキップして構いません。その後プロジェクトマネージャと呼ばれるウインドウで、ユーザーの操作待ちになります。ここでは、右下にあるNew Projectをクリックしてプロジェクト名を入力してください。

4)プロジェクト設定

スクリーン右下にあるあギアマークをクリックすると、プロジェクトごとの設定ウインドウが開きます。環境設定ににていますが、ここでは今回作成したプロジェクトだけに反映する設定ができます。

Color Management
・Color science・・・DaVinci YRGB Color Managed
・Input Color Space・・・Bypass
・Timeline Color Space・・・Rec709 Gamma2.4
・Output Color Space・・・Bypass

以上四点を設定変更してください。その後、ウインドウ右下のSaveでウインドウを閉じてください。

5)クリップの読み込みとInput Color Space設定

スクリーン下にあるページ切り替えボタンから、一番左にある「Media」をクリックします。MediaページはDaVinci Resolveで使用する素材を読み込むための機能がいろいろ用意されています。読み込みにもたくさんの選択肢とオプションがあるのですが、ここでは最もシンプルで間違いのない方法を使用します。先にPremiere Proから書き出したProResコーデックのメディアファイルをFinderで表示しておき、それをドラッグ&ドロップでダイレクトにMediaページの下半分の領域に読み込みます。ここはMedia Poolと呼ぶ素材の置き場所です。DaVinci Resolveがサポートしている形式であれば、この方法が最も直感的です。

次に、Media Poolにある読み込んだクリップを右クリックします。Input Color Spaceの中から「Rec.709 Gamma 2.4」を選択します。これにより、先ほどプロジェクト設定でInput Color SpaceをBypassにしていて未設定だったところが解決されました。

6)タイムラインの作成

読み込んだクリップは、タイムラインに配置しなければ基本的な流れでは書き出すことができません。読み込んだクリップを使ったタイムラインを作成するために、Media Poolのクリップを右クリックします。その中の一番上にある「Create New Timeline Using Selected Clips…」を実行します。小さなウインドウが表示されるので、その中でタイムラインのスペックを指定します。この辺りはPremiere Proと同じような項目を指定することになります。

Timeline Nameは自由に設定可能ですが、デフォルトのままで構いません。続いて、左下の「Use Custom Settings」をクリックしてページを進めます。Formatタブではタイムラインの解像度やフレームレートなどの重要な項目があります。間違いのないようにセットしてください。ドロップフレームの場合もここで設定します。確認後右下の「Create」をクリックします。これにより、読み込んだクリップを含んだタイムラインが作成されました。

7)DaVinci Resolveからの出力

非常にもったいない話ですが、DaVinci Resolveの主要な機能はすべて使用せずにいきなり書き出しのためのDeliverページに切り替えてください。スクリーン下の一番右の項目がDeliverです。Deliverページの左上からはじまるパートが、書き出し設定のためのパレットです。上から順番に確認していきましょう。

最上部にはプリセットが並んでいますが、Customを選択してください。次に出力先の設定のためにBrowseボタンを押してください。macOSのダイアログが表示されるので、デスクトップなどの書き出し先を指定します。書き出しするファイル名は「Filename」に入力してください。 そして、これがDaVinci Resolveの独特のオプションなのですが、Render設定から「Single clip」を選択します。これによってタイムライン全体が単一ファイルに出力されます。次からはビデオとオーディオのコーデックを指定します。ここでは、先のPremiere Proの設定に沿って同じ設定を確認してください。最後に、Advanced Settingsを開いてそこにある「Bypass re-encode when possible」にチェックが入っていることを確認してください。この設定によって、ソースコーデックがここでの出力設定と同じ場合、再エンコードがバイパスされます。その結果クオリティ劣化につながる二重エンコードを回避できます。

設定は以上で、「Add Render Queue」をクリックすると、スクリーン右側の書き出しキューに登録されます。続いて「Start Render」をクリックすると後は書き出し完了を待つだけです。

8)仕上げの確認

DaVinci Resolveからの書き出しが完了したら、デスクトップなどのファイルの保存場所を表示して、そのファイルをQuickTimeプレーヤーで開いてみてください。その色再現が、先のPremiere Proのビューワに近ければ合格です。もしも大きく異なっている場合には、ここまでの手順と設定を見直して再度処理してみてください。

少しゴチャゴチャしていますが、Premiere Proでテストチャートを使って編集しています。上の左側がソースで右側がタイムラインです。その下に、QuickTimeプレーヤーで開いた二つのメディアファイルを並べて表示しました。下の左がPremiere Proから書き出したもので、下の右がDaVinci Resolve経由で出力したものです。左下のPremiere Proダイレクトのものだけがブライトネスが上がっているのがわかります。巷でPremiere Proのカラーシフトが問題になるのは正にこのケースだと思います。これではせっかく色に気を遣って編集した制作者はがっかりしてしまうでしょう。そして、これを解決したのが右側下になります。DaVinci Resolveを通したことで、映像のRGB値には手を加えていませんが、ファイル内のNCLCタグが差し替わっています。

最後に

いかがだったでしょうか。本来はPremiere Proだけで解決できれば良いのですが、きっと時間が経過したら解決していることでしょう。その時には今を振り返って、「あのころは面倒なことをやっていたなあ」と遠い目で思い出してください(笑)今回の検証した環境をもう一度書いておきます。

2020年8月29日現在
・macOS10.15.6 Catalina
・Adobe Premiere Pro 14.3.2(CC2020)
・DaVinci Resolve 16.2.6

「Premiere Proの色について|実践」への4件のフィードバック

  1. ピンバック: Premiere Proの色について|概要 – yamaqblog

  2. YamaQさま

    私もいくつか検証してみました。
    YamaQ-ChartをPremirePro2019に入れてProRes422HQで書き出します。
    確かに書き出したQTはシーケンスと色が違っていました。
    それをDaVinci Resolve STUDIO 16.2.5に入れてみます。
    デフォルトの入力カラースペースは「Rec.709-A」と表示されていますので
    これを「Rec.709 Gamma2.4」に変えて書き出した場合ですが、タイムラインカラースペースが「Rec.709 Gamma2.4」でも「Rec.709-A」でも書き出されたQTは正しい色(Premireのシーケンスと同等)になりましたが
    入力カラースペースが「Rec.709-A」のままでは、タイムラインカラースペースが「Rec.709 Gamma2.4」でも「Rec.709-A」でも書き出されたQTは正しくない色(Premireのシーケンスと一致しない)でした。

    入力カラースペース        タイムラインカラースペース 結果  NCLC
    Rec.709-A            Rec.709 Gamma 2.4    NG  1-2-1
    Rec.709-A            Rec.709-A         NG  1−1−1
    Rec.709 Gamma 2.4       Rec.709 Gamma 2.4    OK  1-2-1
    Rec.709 Gamma 2.4       Rec.709-A         OK  1-1-1

    よくわからなくなってきたのですが、PremireProで書き出された物は全て間違った「Rec.709-A」メタが付いているのか
    正しい時もあるのか、外部から持ち込まれたQTがこの状態になっていた場合は確認出来ないなと感じております。

    また、NCLCメタの書き直しの為にResolveでシーケンスを作り全て書き出し直すのは(動画の長さにもよりますが)
    ファイルサイズの問題もあって応急処置になりますね。

    ResolveではカラーサイエンスをDavinci YRGB、Rec.709-Aで作業していたのですが
    この問題があると特に入力カラースペースを変更出来ないと困りますね。

  3. やまたけさま

    情報ありがとうございます。このような検証は信頼できる方と一緒に進めると安心感が高まります。助かります。

    実はNCLCに関しては、QuickTimeの内部に隠し情報と言いますか、私もまだ掴めていないメタデータがあるように感じています。同じ1-1-1やRec709_2でも異なる挙動になることがあります。

    ご指摘通り、NCLCの書き換えのためだけにDaVinci Resolveを経由して書き出すのはナンセンスです。Premiere ProはPremiere Pro独自で解決できるようになるべきです。
    BBCではメタデータ部分だけ書き換えできるようなスクリプトをffprobeと合わせて使っているようなWebサイトを見たことがあります。blogにも書いたように後からメタデータだけを書き直すのもインチキ臭くて(笑)気が引けるのが個人的な感想です。

    本件は、継続していろいろ情報を収集しようと思います。ありがとうございます。

  4. 補足ですが、

    Rec709AがDaVinci Resolveに追加された背景には、Mac内で処理された色に合わせることがあったようです。例えば、自分のMacの中で動画のキャプチャをした場合、後からそれを使ってDaVinci Resolveで編集するとカラーシフトが出てうまくいきません。そんな時に、Input Color SpaceでRec709Aを選択すると、自分が見ていた色に近くなると思います。

    一説では、Rec709Aのガンマは1.94あたりだと言われています。トーンカーブを使ってColorページのスコープで見ると、なんとかくそのくらいかな?と言う気はします。

    このような用途と目的が背景にあるため、プロジェクト設定のTimeline Color SpaceやOutput Color Spaceでは使うべきではない項目です。使うのならInput Color Spaceでだけに留めておくべきです。

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