YouTube動画で色についての考察

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今や映像のフォーマットは各種入り乱れ始めています。歴史のあるビデオ規格のRec709をはじめ、Web向けのsRGBやMacで採用されているDisplay P3などを中心に、この先さらに規格は増えていく気配が濃厚です。これまで私がセミナーで伝えていたのは、Web用のコンテンツはsRGBで、なんて言ってはいました。気になっていたYouTubeについてじっくり検証したところ、それが正確ではなかったことが判明しました。そこで、現状ではどのようになっているかを、今回はレポートしたいと思います。はじめに是非理解していただきたいのは、この情報はYouTube側の事情によってこの先変更される可能性があること。また使うソフトウエアや環境でも違いが出ることはしっかりと理解して、くれぐれも鵜呑みにせずにご自身でしっかり「消化して」実制作に活かしてください。

また、今回検証したのはYouTubeであって、他のサービスでも同じ結果とは言えません。仕事でしっかり色をハンドリングしたければ、ひとつずつ事前にチェックすることが必要になってくるでしょう。その意味でも、完成時のフォーマットが多様化する心配があります。

今回検証した環境は?

改めて言うまでもなく、私は年季の入ったMacユーザーなので、Windowsではどうですか?のようなご質問には十分な答えができません。検証したときのスペックをはじめに列挙しておきましょう。

  • MacBook Pro 16inch(モニタリングは内蔵モニターのみを使用)
  • AMD Radeon Pro 5500M/Intel UHD Graphics 630
  • 内蔵メモリは64GB
  • macOS 10.15.3
  • DaVinci Resolve 16.2(Build 055)
  • YouTube視聴は、Chrome80.0.3987.132とSafari13.0.5

環境は極端にカスタマイズしているわけではなく、一般的に見てとてもシンプルな構成だと理解しています。WebブラウザはChromeとSafariの最新版で確認しましたが、色に関しての見え方は目視では同じように見えました。

何を目標にしたか?

YouTube動画を制作する際に、最終的にアップロードした動画コンテンツをChomeブラウザで見た時の色と、DaVinci Resolveで色調整している時のビューワの色を目視で同じもしくは近いと感じるようにする方法を手に入れることです。制作工程の色とアップした後の色に違いがある場合は、アップロード時の色合わせでトライ&エラーを繰り返すことになり、広告映像などで色の発色にシビアな仕事の場合にはこの段階で余計な工程を産んでしまいます。DaVinci Resolveのビューワで見ている色で、関係者のコンセンサスが取れることをゴールとしました。

現実的には、私のMacBook ProとクライアントのLet’s Noteではそもそも色の見え方が異なるでしょう。これらを合わせることには不毛な作業だと私は考えるため、ここの深追いはしません。あくまでも私という一制作者のコンピュータの中で一貫して同じように見えるかどうかが重要なのです。これを手に入れるための考察です。

まずは結論から

勿体ぶるつもりはありませんので、まずは結論から説明します。どうやればDaVinci Resolveのビューワと、Chromeブラウザの色をほぼ同じにすることができたのか?です。

DaVinci Resolveのセッティング


Preferences>General>ColorSyncの設定のチェックを外す(Use Mac Display Color Profiles for Viewers)


Project Settings>Color Management>Color ScienceをDaVinci YRGB Color Managed
Project Settings>Color Management>Use Separate Color Space and Gammaのチェックを入れる
Project Settings>Color Management>Input Color SpaceをBypass
Project Settings>Color Management>Timeline Color SpaceをP3-D65/Gamma 2.6
Project Settings>Color Management>Output Color SpaceをBypass

設定後は

上記のようにPreferencesの設定変更をするため、プロジェクトを保存してから必ずDaVinci Resolveの立ち上げ直しをしてください。本来はResolveの立ち上げ直しは不要ですが、本件の検証の中ではそれによって挙動が変わったため、ここの手順は重要になります。アプリケーションの立ち上げ直しであって、macOSの再起動ではありませんので誤解のないように。

Macのセッティング


システム環境設定>ディスプレイ>Display profileはデフォルトのColor LCD


念のため、自動的にGPUを切り替えるモードを無効にしておきます。この設定は今回のテーマに関わりなく、DaVinci ResolveをMacBook ProやiMacで使う時には必須の設定です(Automatic graphics switching)。モデルによってはこの設定項目が表示されない場合がありますが、その時は設定の方法がありませんので、この部分はスルーしてください。

DaVinci Resolveでの作業(EditやColorなどすべて)

実作業中はすべて上記のセッティングで作業を進めます。ガンマが2.6のため切り替えた当初は、コントラストが弱めに見えるので心配になりますが、慣れるしかありません。プロジェクトで使用するクリップごとにカラースペースなどプロファイルの設定は必要ですので、Mediaページでインポートを実行した直後には必ず確認と必要に応じて設定変更を行います。外部モニターを経由してモニタリングすることは可能ですが、今回の目的である色の正確な確認のためには使わないようにします。

DaVinci Resolveからのクリップ書き出し

成果物であるYouTubeにアップするための動画を書き出す際には、一部上記の設定に対して変更が必要です。

Project Settings>Color Management>Timeline Color SpaceをRec709/Gamma 2.4

これにより、それまで見ていたビューワの色味が変わってしまいますが、気にしないでください。最終的にはYouTubeにアップしたら、これまで見ていた色で表示されます。DaVinci Resolveからの書き出しでは、YouTube設定を使用して、必要な部分だけ変更するだけです。特に注意点はありません。

Customからはじめても良いのですが、Network Optimizationを有効にし忘れると良くないので、YouTube設定をベースにすることをお勧めします。以上です。これで制作していた時に使っていたMacBook ProでChromeやSafariを起動して動画を見れば、同じような色味になっているはずです。

どうやって色の同一性を確認したか

色の確認は本来はディスプレイデバイスから発する光をアナライザーなどで測定して判断すべきです。ただ今回は使用するディスプレイデバイスは一台のMacBook Proの内蔵モニターだけです。そのためデバイスによる違いは考慮しなくて良くなります。したがって、ソフトウエアのビューワ上でどのようなRGB値だったかをmacOS付属のDigital Color Meterアプリでピックして確認しました。そのとき色の基準としたのは自前のカラーチャートです。もしこれがない場合には、カラーバーでもPhotoshopで作ったカラーパッチでもなんでも結構です。RGB値が正確に把握できていれば良いのです。

一つ目のスクリーンショットはDaVinci ResolveのColorページ、二つ目がChromeで、三つ目がSafariでYouTubeを開いたところです。Chromeはわずかに値はズレますが目視ではほとんど同じように見えました。Safariでは全く同じ値になりました。

さらにもう少し検証

ここまでの検証では、デフォルトの状態で使っている素材もカラーチャートだけでした。素材は変わらないもののハイキーやローキーに明るさを変えるなどして、もう少し現実的な制作フローに近づけた確認もしてみました。そうするとRGBの値のズレ方がもう少し広がってきました。ただ、幸いなことには目視のレベルでは大きくズレなかったので、なんとか使えそうなクオリティは維持していると私は判断しました。興味を持たれた方は、お手持ちの素材を使っていろんな条件で試してみると傾向が見えてくるかもしれません。さらにさらに、手元にあったArriのチャート(LogCプロファイル)やRED(REDWideGammutLog3G10)でも試したところ、同じような傾向にはなりました。

今回の成果物

これまでは、Web動画はsRGBですよ、なんてある意味無責任で無検証でお話ししていた面があって、その点はとても安直だったと反省しています。今回この検証に至ったのは、YouTubeから自分でアップした動画をダウンロードしたところ、Color PrimaryとTransfer Functionが共にRec709になっていたのです。アレレ?sRGBではないのか?と、これまでの理解が音を立てて崩れ去ったのです。そこでこのような確認をしてみました。

みなさんもご自身でアップした動画を、ダウンロードしてみると新たな発見があると思います。それと、YouTube側でもユーザーから送られた動画に対して、明らかに何らかの色が変わってしまう処理を加えていることがわかったのです。この背景に何があるのかは不明ですが、ユーザーとしてはどのように制作すれば良いのかは気になるところです。今回の検証がYouTubeを利用するみなさんのお役に立てることを期待しています。

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